39 エイリアン脂肪の恐怖 ~突然死招く「心臓周囲脂肪」

 みなさんは心臓の周りにも脂肪が付着するのをご存じですか。

 内臓脂肪の蓄積がない人には、心臓の周りに脂肪はありません。しかし、内臓脂肪がたまりすぎると、異所性脂肪として本来あるはずのない心臓の周りに脂肪がたまってしまいます。この心臓周囲の脂肪は、ひっそりと心臓に寄生するかのように付着し、突然死を引き起こすことから「エイリアン脂肪」とも呼ばれています。

 エイリアン脂肪は心臓の周囲にこびりつき、心臓に酸素や栄養を運ぶ血管である冠動脈へと細い血管を伸ばし、悪影響を与えます。具体的には、人体がエイリアン脂肪を異物と判断し、白血球の一種であるマクロファージがこれを退治しようとして攻撃します。マクロファージは本来ウイルスや死んだ細胞などを食べて分解してくれる体内の掃除屋の役割を担っています。しかし、エイリアン脂肪が増大してくると、マクロファージはこれを異物とみなし、これを溶かそうと攻撃を仕掛けるのです。

 この時マクロファージが出す毒素が、エイリアン脂肪から伸びた細い血管を通って冠動脈に流れ込むことで血管に炎症を起こして、動脈硬化を急速に進行させ、心筋梗塞、不整脈といった突然死の原因になってしまいます。

 内臓脂肪であれば、腹囲が増加することで、最近ちょっとおなかがポッコリしてきたという自覚があることが多いと思います。しかし、残念なことに、エイリアン脂肪は自覚症状がないまま、心臓周囲にひっそりと付着し、心臓を傷つけていくのです。肥満気味の人は注意が必要ですが、太っていない人も油断はできません。糖質などを食べ過ぎたり、運動不足だったりすると、余った栄養は内臓脂肪や皮下脂肪として蓄積されますが、脂肪細胞の数は急に増やせません。そのため脂肪細胞は一つ一つが膨張することで、余った栄養を蓄積します。脂肪細胞は痩せている人の方が太っている人より少ないため、痩せている人は脂肪をため込めない分、心臓周囲などの本来ため込むべきでない場所に脂肪が蓄積してしまいます。

 したがって、もともと太っていない人は、内臓脂肪が少しでも増えた場合、エイリアン脂肪も蓄積してしまうのです。エイリアン脂肪は、前回解説した脂肪肝と同じ異所性脂肪であるため、たとえ肥満がなくても脂肪肝がある人は、エイリアン脂肪が心臓に付着している可能性が高いと思います。すなわち、自覚症状がなく、発見が難しいエイリアン脂肪のチェックポイントは「腹囲の増加」と「脂肪肝」の二つになります。

 日本では多くの人が突然死で命を失っています。心臓が原因で突然心停止となる人は、1年間で約7.9万人もいて、7分に1人が突然死で亡くなっています。そして心臓が原因の突然死の多くに、このエイリアン脂肪が関係しているのです。「いつ死ぬかわからない」と口にする人でさえ、自分が今日明日に突然死すると本気で思っている人は少ないと思います。

 数年前、ある芸能人の方が心臓のエコー検査でエイリアン脂肪を指摘され、慌てて私の外来を受診されたことがあります。心臓にエイリアン脂肪が付いているなんて言われて慌てない方が不思議かもしれません。心臓病というと、高齢者の病気というイメージがあるかもしれませんが、心臓周囲の脂肪が原因の場合、年齢に関係なく発症してしまいます。

 よもやの突然死を極力防ぐには、エイリアン脂肪を付けない、あるいはなくすために、内臓脂肪を減らすことが重要です。肝臓の脂肪と同様に、エイリアン脂肪は、内臓脂肪や皮下脂肪よりも落としやすく、少しの努力で改善します。エイリアン脂肪は早い段階で糖質過剰摂取などの悪い生活習慣を改善すれば容易になくなり、突然死のリスクが大幅に軽減するのです。

2025年5月24日号掲載

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