わたしの知らない子どもたち

=2時間30分
イオンシネマ須坂(☎︎214・6729)で公開中

(C)2026 K2 Pictures・AOI Pro.

孤児の視点で物語る 戦争の悲惨さ 残酷さ

 西川美和監督による原案・オリジナル脚本の「わたしの知らない子どもたち」は、戦後の混乱の中で生き抜こうとした子どもたちの姿を丁寧に描いたヒューマンドラマだ。

 1945年、敗戦で焼け野原となった東京には、家も家族も失い行き場をなくした浮浪児たちが路上にあふれていた。疎開先から戻った12歳の少女、琴子(小八重葵美)は、身を守るため名前を変え男の子の姿で生きることを決意する。少年たちと身を寄せ合い次第にたくましさを身につけてゆくが、孤児たちを収容する孤島の矯正施設に送られてしまう。厳格で支配的な日々から自由を求めて仲間たちと共に脱出を試みるが…。

 敗戦後の日本は穏やかな日常には程遠く、琴子が出会う周囲の大人たちもさまざまだ。戦時中でも音楽を愛する豊かな心を育んでくれた音楽家の父(竹野内豊)。軍国主義教育を教え込み後悔の念にかられる担任教師(二階堂ふみ)。闇市を牛耳る裏社会の男(岡田准一)。危険を冒しながらも子どもたちに救いの手を差し伸べようとする老夫婦(役所広司・田中裕子)ら、善と悪の境界線や、人間性とは何かを、生きるなかで学んでゆく。どんな時も毅然と前を向く琴子役の小八重葵美の凛としたまなざしが印象的だ。

 見事な群像劇を紡いだ西川美和監督は広島市出身で、常に「戦争と平和」というテーマが身近にあったという。前作の役所広司主演「すばらしき世界」(2021年)を製作中に、12万人もいた戦災孤児の存在を知り心を動かされたのが、初めての戦争映画を撮るきっかけだったそうだ。

 親の愛情とぬくもりに包まれた幸せな子ども時代を奪われた孤児たちの視点で物語を描くことで、戦争の悲惨さ、残酷さと、大人たちが果たすべき責任が見事に伝わってくる。

 81年前、戦争のために身寄りのなくなった子どもたち。しかし現在も世界のどこかで戦争が起きていて、未来を奪われた多くの孤児が再び生まれていることに胸を痛めずにいられない。

(日本映画ペンクラブ会員、ライター)


2026年10月17日号掲載

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