12 睡眠とアンチエイジング ~重要なメラトニンの分泌

 ここ最近、「アンチエイジング」という言葉を見聞きすることはありませんか? 「アンチエイジング」は、日本語で「抗加齢」や「抗老化」と説明されます。つまり、加齢とともに起こるさまざまな体の機能低下を防ぐことを「アンチエイジング」と呼びます。

 いつまでも若々しい心と体を維持したい、実際の年齢よりも若く見られたい、できるだけ長生きしたい―という欲望は、老若男女すべてに共通しているといえます。老化や死を止めることは不可能ですが、起こるべき老化現象を少しでも遅らせることがアンチエイジングの目的です。したがって、本連載の「健康寿命を延ばす」と「アンチエイジング」はほぼ同義語と考えていいと思います。

 私事ですが、2023年1月「日本抗加齢医学会専門医」を取得しました。今後は専門医として、本連載を通じて皆さんのアンチエイジングにご協力できればと思います。これからもぜひ月1回の私の記事をお読みいただければ幸いです。

 さて、今回は「睡眠とアンチエイジング」について述べます。睡眠不足の蓄積は、がん、糖尿病や高血圧などの生活習慣病、うつ病などの精神疾患、認知症など、さまざまな病気の発症リスクを高めることが明らかになってきています。米国の調査で、睡眠時間が7時間の人が最も死亡率が低く長寿で、睡眠時間が長過ぎても短か過ぎても死亡リスクが上昇するという結果が報告されました。これまで理想的な睡眠時間は8時間といわれてきましたが、最近では、睡眠は量より質が大切といわれています。

 睡眠には、浅い眠りの「レム睡眠」と、深い眠りの「ノンレム睡眠」の2種類があり、90~120分の周期で繰り返しています。レム睡眠中に夢を見るのは有名な話ですが、これは「記憶を整理する」というレム睡眠の働きによるものです。ノンレム睡眠中には、脳や身体の疲労が回復し、成長ホルモンの分泌が行われます。
 「成長ホルモン」は、脳の下垂体から分泌され、骨密度を増やす、筋肉を増大させる、皮膚の張りを保つなどの働きを持ち、老化予防には絶対に必要なホルモンといわれています。30歳前後を境に成長ホルモンの分泌は減っていくため、質の良い睡眠をとることで可能な限り分泌を高めることが重要です。

 睡眠のゴールデンタイムとは、午後10時から午前2時の時間帯を指します。この時間帯に成長ホルモンが分泌されるので、ゴールデンタイムに睡眠をとることが健康や美肌に良いといわれています。しかし、このゴールデンタイムに関する認識は誤解です。成長ホルモンの分泌と睡眠をとる時間帯は直接関係がなく、入眠後に深いノンレム睡眠をとることが分泌促進に重要とされています。

 もう一つの睡眠に関わるホルモンとして「メラトニン」があります。メラトニンは、脳の松果体から分泌されるホルモンで、起床から15時間程度経過し、周囲が暗くなった時点で分泌が始まります。睡眠中にも分泌は続き、明け方に光を感じとると分泌は止まります。メラトニンには、体と心を落ち着かせ、睡眠を促す作用に加え、成長ホルモンの分泌を促す役割もあります。ストレスなく入眠できると、疲労回復が促進されます。

 メラトニンは、年齢を重ねるとともに分泌量が減ることが明らかになっています。メラトニンの低下は「酸化ストレス」を増加させるため、皮膚の老化や、血管老化による動脈硬化、神経機能の老化による認知症につながります。したがって、メラトニン分泌をできるだけ高める生活習慣を身につけることが、睡眠におけるアンチエイジングにとって重要です。

 次回は「睡眠の質を高める方法」について述べたいと思います。

2023年3月4日号掲載

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