21 脳腸相関 ~疾患と腸内環境に深い関係

 「緊張すると、おなかがキリキリと痛む」

 「仕事に行くときに下痢になる」

 このような精神的ストレスが腸の不調を招いたり、その逆で「便秘が続いて気分が晴れない」など腸の不調が精神的なストレスに結びついたりしてしまうことは多く、私自身、消化器内科医としてこのような人を診察することは少なくありません。

 こうした経験・症状は、脳と腸が互いに情報を伝達し合い、双方向で作用しあう関係にあることを示しています。このような脳と腸の関係は「脳腸相関」と呼ばれ、腸内細菌が深く関わっていることが、近年の研究で分かってきました。

 ストレスなどが原因で、便秘や下痢、腹痛が慢性化する過敏性腸症候群は、こうした腸と脳との相互作用がもたらす病気の代表例です。さらに近年の研究で、脳腸相関には腸内細菌が深く関わっており、腸の病気だけでなく、うつ病などの心の病や、パーキンソン病、アルツハイマー病などの脳の病気の発症とも関係することが分かってきました。

 人間の腸には約1千種類、約100兆もの腸内細菌が住んでいるといわれています。腸の中では、さまざまな腸内細菌が菌種ごとに塊をつくっていて、それらの塊が腸の内壁に隙間なく張りついています。そのエリアは、まるでお花畑みたいに見えるということから「腸内フローラ」と呼ばれています。

 腸内細菌は、善玉の菌と悪玉の菌、その中間の菌という3グループで構成されています。これらの菌は互いに密接な関係を持ち、複雑にバランスを取っています。腸内細菌の中で一番数が多い菌は中間の菌で、次に善玉菌が多く、悪玉菌は少数です。

 悪玉菌は、脂質が中心の食事・不規則な生活・各種のストレス・便秘などが原因で腸内に増えてきます。悪玉菌は肥満、糖尿病、大腸がん、動脈硬化症、炎症性腸疾患などの疾患と密接な関係があり、これらの患者の腸内細菌は健常者と比べて著しく変化していることが知られています。一方、善玉菌はビフィズス菌や乳酸菌などがあり、乳酸や酢酸などを作り、腸内を酸性にすることによって、悪玉菌の増殖を抑えて腸の運動を活発にし、食中毒菌や病原菌による感染の予防や、発がん物質の産生を抑制する腸内環境をつくります。また、善玉菌は腸内でさまざまなビタミンを産生します。

 腸内の善玉菌の割合を増やす方法には、大きく分けて二通りあります。まず一つ目は、健康に有用な作用をもたらす生きた善玉菌である「プロバイオティクス」を直接摂取する方法です。食品ではヨーグルト、乳酸菌飲料、納豆、漬物など、ビフィズス菌や乳酸菌を含むものです。ただし、これらの菌は腸内にある程度の期間は存在しても、住み着くことはないとされています。そのため、毎日続けて摂取し、腸に補充することが勧められます。なお、ヨーグルトは腸内の善玉菌を増やすとはいえ、糖質が多く含まれるものは、糖尿病・肥満の原因となり得ますので、連日摂取する場合は無糖ヨーグルトが望ましいと考えます。

 二つ目は、腸内にもともと存在する善玉菌を増やす作用のある「プレバイオティクス」を摂取する方法です。食品成分としては食物繊維やオリゴ糖で、これらの成分は野菜類、豆類などに多く含まれています。消化・吸収されることなく大腸まで達し、腸内にもともと存在する善玉菌に、好物である食物繊維やオリゴ糖を優先的に与えて、善玉菌の数を増やそうという考えです。オリゴ糖は、大豆、タマネギ、ゴボウ、ネギ、ニンニク、アスパラガスなどの食品に多く含まれていますので、これらの食材を食事に取り入れると良いでしょう。

 腸内環境を健康的な好ましい状態にするためには、善玉菌が多く含まれる、あるいは善玉菌を増やしてくれる食品を積極的に取ることが大切です。

2023年11月25日号掲載

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