「最近おなかが出てきたんですけど、何か病気なのでしょうか」と外来で聞かれることがあります。
ぽっこり突き出したおなかの正体は「内臓脂肪」です。内臓脂肪は、言葉のイメージから内臓の中にある脂肪だと思っている人がいますが、そうではなくて、胃や腸などの内臓の周りに蓄積する脂肪のことをいいます。蓄積するとおなかがぽっこり張り出した体形になることから、内臓脂肪が多い肥満の体形は、リンゴ型肥満と呼ばれることもあります。内臓脂肪はたまり過ぎると生活習慣病のリスクが増加する厄介な脂肪です。

人体の約20%は脂肪(体脂肪)でできていますが、大きく分けると「内臓脂肪」のほかに「皮下脂肪」と「異所性脂肪」があります。
「皮下脂肪」は、その名の通り、皮膚のすぐ下に付く脂肪です。全身に付きますが、特にお尻や太ももなど下半身に集中して付くため、皮下脂肪が多い肥満の体形は、洋ナシ型肥満と呼ばれることがあります。皮膚のすぐ下に蓄積されやすく、見た目にも付いていることが分かりやすい脂肪です。体温の維持や、内臓や骨を保護する働きがあるため、落としにくいという特徴があります。内臓脂肪と皮下脂肪を簡単に鑑別するには、手でつまめる脂肪かどうかで分かります。つまめる脂肪は皮下脂肪ですし、つまめない脂肪は内臓脂肪です。
もう一つの脂肪は「異所性脂肪」と言われ、内臓脂肪、皮下脂肪に次ぐ第3の脂肪と呼ばれています。異所性脂肪はさまざまな病気と関わってくることから近年注目されています。異所性脂肪は肝臓や心臓、膵臓、筋肉など本来たまるはずのない場所に蓄積された脂肪のことをいいます。
ところで、読者の皆さんは、肥満を病気だと思われるでしょうか。厳密には肥満は病気ではありません。また、「肥満だから、好みの服を着られない」「精神的ストレスで肥満になっちゃった」など、何となく見かけから肥満という言葉を使っていると思います。そもそも肥満の定義は、体格指数BMI{体重(kg)÷身長(m)÷身長(m)}が25以上となっています。肥満の方は先ほど述べました「内臓脂肪」「皮下脂肪」「異所性脂肪」の3つの脂肪が増えた状態です。
BMI25以上で、かつ、肥満による健康障害を一つ以上有するか、腹部CT検査で内臓脂肪面積が100㎠以上の内臓脂肪を有する場合を「肥満症」といいます。「肥満症」は、肥満と異なり病気として取り扱われます。
肥満による健康障害とは、糖尿病・糖尿病予備群、脂質異常症、高血圧、高尿酸血症・痛風、心筋梗塞・狭心症、脳梗塞、脂肪肝、月経異常・不妊、睡眠時無呼吸症候群、整形外科的疾患(変形性膝関節症、変形性股関節症、変形性脊椎症)、肥満関連腎臓病を指しています。
肥満症の診断基準は、「内臓脂肪蓄積」を重要視しており、内臓脂肪型肥満であれば、健康障害を持たなくても将来のリスク肥満として、肥満症と診断することになっています。肥満症は先ほど述べた疾患以外にも、大腸がん、食道がん、肝臓がん、膵臓がん、腎臓がん、乳がん、子宮体がんなどの悪性疾患、逆流性食道炎、胆石症、気管支喘息などにも関連しており、まさに万病の元といえます。
日本人は内臓脂肪型肥満が多いため、肥満≒肥満症と考えていいと思います。内臓脂肪が蓄積しやすい日本人は、肥満すると生活習慣病をきたしやすく、肥満してはいけない民族だといわれています。にもかかわらず、ここ最近は生活習慣、特に食習慣の悪化に伴う肥満の人が日本において増えてきています。
先月「イラスト&図解 ゼロから知りたい! 内臓脂肪の教科書」(西東社・1100円)を出版しましたので、最近内臓脂肪が増えてきて心配だと思われる人はぜひお手に取っていただければと思います。
2024年6月22日号掲載
