肥満は、内臓脂肪と皮下脂肪のどちらがより多いかで大別され、内臓脂肪の多いのが内臓脂肪型肥満(別名・リンゴ型肥満)、皮下脂肪の多いのが皮下脂肪型肥満(別名・洋ナシ型肥満)です。欧米人は皮下脂肪型肥満が多いのに対し、日本人を含む東洋人は内臓脂肪型肥満が多い傾向にあります。

皮下脂肪型肥満の人の多くは、見た目は太っているのに、血液検査など健康診断では異常を認めない人が多いという特徴があります。それに対し、内臓脂肪型肥満の人は、そんなに太って見えないのに、さまざまな生活習慣病を合併することが多く、その主たる原因が内臓脂肪過多によるものです。したがって、内臓脂肪型肥満が多い日本人の場合、欧米人と比較して、肥満の程度が比較的軽度の段階から生活習慣病を発症しやすい民族性を有しているといわれています。
では、日本人は内臓脂肪がどのくらいたまりやすいのでしょうか。日本人男性239人と米国白人男性177人(どちらも40代)を対象に、CTにより内臓脂肪面積を測定し、比較した研究があります。それによると、全体的に日本人は白人よりも肥満度が低かったものの、どの腹囲カテゴリーにおいても、日本人の内臓脂肪面積および内臓脂肪面積/皮下脂肪面積比は白人よりも高値であり、皮下脂肪1としたときの内臓脂肪の面積は日本人が1・02、米国人が0・75でした。要するに日本人は米国人よりも25%も内臓脂肪をためやすいのです。
その理由の一つとしては、欧米人と日本人の腹筋(腹横筋と腹斜筋)の強さの違いが挙げられます。欧米人は腹筋が強いのに対して、日本人は腹筋が弱く、内臓を十分に支えることができません。そのため、代わりに内臓脂肪を増やして内臓を固定するようになったのではないかと考えられています。
また、この日本人と欧米人の内臓脂肪の蓄積しやすさの違いの背景にあるのは、糖質を含む食事をしたときに膵臓(すいぞう)から追加分泌されるインスリンというホルモンの分泌力の違いです。インスリンは余ったエネルギーを脂肪細胞へ誘導して体脂肪として蓄積する働きがありますが、体脂肪の中でも特に皮下脂肪をためる作用が強い特徴があります。日本人は体質的にインスリンの分泌力が欧米人と比べて弱く、皮下脂肪にためるのが苦手なので、あふれた分が危険な内臓脂肪や異所性脂肪としてたまってしまうのです。
さらに、同じ日本人でも女性は内臓脂肪が付きにくく、糖尿病の発症率が男性の半分しかありません。欧米人は女性だけでなく男性も内臓脂肪がたまりにくいことから、糖尿病の発症率は男性と女性がほぼ同じです。
日本人男性は欧米人男性とくらべるとずっとスリムなのに、残念ながら内臓脂肪が付きやすいため、体型が同じなら糖尿病などの生活習慣病を発症しやすいということです。この傾向は日本人だけでなくアジア人全体で見られます。
内臓脂肪の基準値は、腹部CTで内臓脂肪面積が100平方センチ以下であり、それ以上ある場合、内臓脂肪型肥満と判定されます。内臓脂肪と比較して皮下脂肪が多い場合でも、内臓脂肪面積が100平方センチ以上ある場合には、皮下脂肪型肥満・内臓脂肪型肥満の両方を合併していることになるので注意が必要です。私の担当するダイエット外来に来られる人の大半が内臓脂肪型肥満であり、日常診療でも日本人が内臓脂肪をためやすいことを認識できます。
ある程度の内臓脂肪は内臓を固定するために必要ですが、もちろん増え過ぎると、生活習慣病を起こしてしまいます。したがって、内臓脂肪をためないような生活習慣を身につけることが大切ですし、現時点で内臓脂肪がたまっている人は、一刻も早く減らすべく生活習慣の改善を図るべきです。その内臓脂肪の減少に最も有効なのは糖質制限です。
2024年12月21日号掲載
