37 異所性脂肪 ~恐ろしい病気の原因にも

 脂肪には、大きく分けて、正所性脂肪と異所性(いしょせい)脂肪があります。正所性脂肪とは、本来蓄積されるべき場所にたまる脂肪であり、皮下脂肪や内臓脂肪を指します。本来、蓄積されるべき場所とは、脂肪細胞が存在する場所です。

 一方、異所性脂肪とは、本来脂肪が蓄積されない場所に不適切にたまる脂肪を指します。内臓脂肪、皮下脂肪に次ぐ第3の脂肪として「異所性脂肪」というものがあり、肝臓や心臓、膵臓、筋肉など本来たまるはずのない場所に蓄積された脂肪のことをいいます。異所性脂肪はさまざまな病気と関わってくることから、近年注目されています。

 皮下脂肪は飢餓に備えたエネルギーを貯蔵する意味合いがあり、体温の維持、内臓や骨の保護という外からの衝撃に対するクッションの役割もあります。内臓脂肪は皮下脂肪同様にエネルギー貯蔵の役割に加え、腸管を守るバリアのような働きをしてウイルスなどの異物が体の中に吸収されるのを防ぐ、内臓を正しい位置に固定するという役割があります。以前の回でもふれたように、内臓脂肪は増え過ぎると糖尿病や高血圧などの生活習慣病の温床になりますが、少な過ぎると胃下垂など内臓下垂を引き起こす原因となってしまうのです。

 皮下脂肪や内臓脂肪の正所性脂肪と異なり、異所性脂肪は本来蓄積されてはいけない脂肪なので、蓄積することの意味合いはなく、命に関わる重篤な病気をもたらしてしまいます。異所性脂肪の代表的なものが脂肪肝です。お酒を飲まない人でも脂肪肝になる場合があり、多くは肥満や糖尿病に合併しています。脂肪肝の人の中には、進行性で肝硬変や肝がんになってしまう人もいます。私はダイエット専門医であるとともに肝臓専門医でもあり、脂肪肝が原因で肝硬変や肝臓がんになってしまった数多くの人を診てきました。決して脂肪肝を軽んじてはいけません。

 異所性脂肪は心臓の周辺、心筋、心外膜周囲にも付着します。すると心臓に酸素や栄養を運ぶ血管に悪影響を与えることがあり、最悪の場合、心筋梗塞などを引き起こす原因になるとも考えられています。また、心筋に影響を及ぼすことで、心臓の収縮力や拡張力を低下させ、心不全が起こりやすくなります。私の患者さんの中にも、20代前半にもかかわらず、高度肥満による異所性脂肪の影響で心不全を発症した人がいます。

 異所性脂肪が膵臓内に蓄積した状態を「脂肪膵」と表現することがあります。膵臓に脂肪が蓄積すると、血糖を下げるホルモンであるインスリンの合成が低下することで、糖尿病の発症につながります。臓器以外で異所性脂肪が蓄積されるのが骨格筋です。骨格筋に異所性脂肪がたまると、インスリンによる筋肉への糖の取り込みが低下することで、脂肪膵同様、糖尿病の発症につながります。

 これらの異所性脂肪の蓄積の程度は、内臓脂肪の蓄積と比例していることが分かっています。つまり、内臓脂肪を減らすことが、異所性脂肪による恐ろしい病気を減らすことにつながるのです。異所性脂肪は内臓脂肪や皮下脂肪よりも落としやすく、異所性脂肪を減らすには内臓脂肪同様に糖質制限による食事療法が最も効果的です。詳しくは、私の著書「イラスト&図解 ゼロから知りたい! 内臓脂肪の教科書」(西東社)をお読みいただければと思います。

 4月6日(日)朝7時から、SBC(全国ネット)で放送される「健康カプセル!ゲンキの時間」のテーマが「ポッコリお腹(内臓脂肪)」で、私が出演して内臓脂肪・異所性脂肪の解説をし、番組の監修も行っています。ご興味のある方はご覧いただければと存じます。

2025年3月22日号掲載

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