45 糖尿病とがん化・感染症 ~高血糖からリスクを誘発

 これまで3回にわたって、糖尿病の合併症として3大慢性合併症(細小血管症)の(1)神経障害(2)網膜症(目)(3)腎症(頭文字をとって「しめじ」)、大血管症の(1)壊疽(2)脳卒中(3)虚血性心疾患(頭文字をとって「えのき」)について述べ、急性合併症の(1)糖尿病ケトアシドーシス(2)高血糖高浸透圧症候群についてもふれました。今回は糖尿病のそのほかの合併症について述べます。

 2011年から2020年までの間の日本における糖尿病患者の死因は、多い順に、がん(38.9%)、感染症(17.0%)、血管障害(10.9%)となっています。糖尿病患者のがん死リスクは一般人よりも高く、糖尿病により発がん・がん死リスクが増加すると考えられています。糖尿病を有するがん患者の生命予後は短く、手術の合併症頻度が高いため、術後の予後が不良になることが多いといわれています。

 糖尿病に伴うがんリスクの倍増率に関する研究によると、糖尿病がある人では、ない人と比べて、がん死リスクは1.3倍で、がん発症リスクは1.2倍増加していることが示されています。がんは糖尿病の関連疾患なのです。

 糖尿病に伴う発がんリスクのがん種別では、海外のデータによると、リスクが高い順に、肝がん(糖尿病がない人と比べて2.2倍)、膵がん(同2.1倍)、子宮がん(同1.6倍)、胆嚢がん(同1.6倍)、腎がん(同1.3倍)、大腸がん(同1.3倍)となっています。国内のデータでは、肝がん(同2.0倍)、膵がん(同1.9倍)、大腸がん(同1.4倍)となっており、主に私が専門とする消化器系の発がんリスクが有意に高いことが判明しています。

 なぜ糖尿病により発がんリスクが高まるのかについては、高血糖と高インスリン血症という主な二つの因子が正常細胞をがん化し、がん細胞を増殖させていくと考えられています。高血糖により血中酸化ストレスが増加すると、染色体にダメージを与え、正常細胞ががん化します。また、高血糖自体が細胞増殖のエネルギーとなり、がん化した細胞の増殖が促進されます。さらに、インスリンは直接的に発がんに関与するといわれています。糖尿病とがんは密接に関係していることを読者の方にはぜひ知っていただければと思います。

 糖尿病は血糖値の上昇により、さまざまな合併症を引き起こす疾患ですが、その中でも見落とされがちなのが「感染症にかかりやすくなる」という易感染性のリスクです。糖尿病患者は、免疫細胞の一種である白血球の機能が低下します。これは高血糖が白血球の遊走・貪食・殺菌能力を低下させるためです。

 また、高血糖状態では細菌やウイルスの増殖が活発になることも分かっています。加えて、血流障害により感染部位に十分な酸素や栄養が届かず、治癒に時間がかかるという悪循環が生まれます。さらに、神経障害によって痛みや発熱などの感染による症状が出にくくなり、受診が遅れることで重症化するケースもあります。

 こうした要因が複合的に作用することで、糖尿病患者は健康な人よりも感染症にかかりやすく、重症化もしやすいのです。糖尿病に関連してよくみられる感染症には、尿路感染症、蜂窩織炎(ほうかしきえん)(皮膚の深部感染)、新型コロナやインフルエンザなどのウイルス感染の重症化による肺炎、歯周病などがあります。

 このように糖尿病はありとあらゆる万病の元です。若くしてがんで亡くなった方、感染症で亡くなった方、下肢切断になった方、失明した方、血液透析を余儀なくされた方、脳梗塞になった方、心筋梗塞になった方など、私は数多くの糖尿病が原因で健康寿命を短くしてしまった方をみてきました。私は読者の皆さまには決してそのようになってもらいたくありません。次回以降、糖尿病の予防・治療として、最適の食事療法についてふれていきたいと思います。

〈第4土曜日に掲載〉

2025年11月22日号掲載

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