54 糖質取り過ぎの日本人

必要以上に糖質を取らない

 外来で患者さんと食事の話をしていると、「甘いものはあまり食べていません」と言われることがよくあります。しかし、詳しく聞いてみると、朝はパン、昼は麺類、夜はご飯、間食に果物、飲み物は野菜ジュースやスポーツドリンク—という人は少なくありません。ご本人にとっては「普通の食事」でも、医師の立場から見ると、糖質をかなり多く取っていることがあります。

 糖質というと、ケーキやチョコレート、ジュースを思い浮かべる人が多いと思います。しかし、糖質は甘いものだけではありません。ご飯、パン、麺類、イモ類なども、体内で消化されるとブドウ糖になります。つまり、「甘いものを控えているから糖質は大丈夫」とは限らないのです。

 日本人の食生活は、昔から米を中心に成り立ってきました。体をよく動かしていた時代には、ご飯は大切なエネルギー源でした。しかし現代は、車で移動し、仕事では座っている時間が長く、家でもスマートフォンやテレビを見る時間が増えています。活動量は減っているのに、主食の量や食べ方は昔の感覚のまま、という人が多いのです。

 日本食といえば、すし、うどん、そば、ラーメン、お好み焼きなど糖質の多いメニューが多いと思いませんか。糖質の「重ね食べ」をしてしまうこともよく見られます。ラーメンとチャーハン、うどんとおにぎり、パスタとパン、お好み焼きとご飯。どれも身近な組み合わせですが、栄養学的には糖質に糖質を重ねています。さらに、天丼、牛丼、カツ丼、カレーライスなど、日本には手軽でおいしい単品メニューがたくさんあります。忙しい昼食には便利ですが、こうした単品料理は、ご飯や麺の量が多く、たんぱく質や野菜が不足しやすい傾向があります。

 もちろん、天丼や牛丼を食べてはいけないという話ではありません。問題は、それが日常的に続くことです。昼に丼物を食べ、夜もしっかりご飯を食べ、さらに食後に果物や甘い飲み物を取る。こうした積み重ねが、知らないうちに糖質摂取過多につながります。

 糖質を多く取ると血糖値が上がります。すると、血糖値を下げるために膵臓からインスリンが分泌されます。インスリンは大切なホルモンですが、余ったエネルギーを脂肪として蓄える働きもあります。この状態が続けば、肥満、糖尿病、脂肪肝、高血圧、脂質異常症などにつながりやすくなります。実際、外来で肥満や糖尿病、脂肪肝の人の食事を聞くと、本人が思っている以上に糖質が多いことはよくあります。

 年齢も大切です。若い頃と同じ量の糖質量を食べているのに太ってきた、という人は多いですが、それは不思議なことではありません。年齢とともに筋肉量や基礎代謝は落ち、活動量も減っていきます。20代の頃に問題なかった食事でも、50代、60代の体には多過ぎることがあります。

 では、糖質は悪者なのでしょうか。決してそうではありません。糖質は脳や筋肉を動かす重要なエネルギー源です。問題は糖質を必要以上に食べることです。極端に糖質をゼロにする必要はありません。大切なのは、自分がどれくらい糖質を取っているかに気づくことです。まずは、ご飯を少し減らす。大盛りを普通盛りにする。麺とご飯を一緒に食べない。丼物や麺類だけで済ませる回数を減らし、肉、魚、卵、大豆製品、野菜を意識して加える。甘い飲み物を水やお茶に変える。こうした小さな工夫でも、糖質の取り過ぎはかなり改善できます。

 現代の日本では、糖質は安く、手軽で、おいしく、どこにでもあります。だからこそ、無意識に取り過ぎてしまいます。今の日本人に必要なのは、糖質との付き合い方を見直すことだと思います。毎日の少しの意識が、将来の肥満や糖尿病を防ぐ第一歩になるのです。

〈第4土曜日に掲載〉

2026年8月22日号掲載

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