血糖値が何年にもわたって高い状態が続き、治療されないままでいると、血管が傷ついて、将来的に失明、腎不全、足の切断、心臓病といった、糖尿病の慢性合併症が起きてしまいます。前回糖尿病の3大慢性合併症である(1)神経障害(2)網膜症(目)(3)腎症についてふれました。この頭文字を取って「しめじ」と覚えればいいんでしたよね。
今回は糖尿病の急性合併症である「糖尿病ケトアシドーシス」と「高血糖高浸透圧症候群」についてふれたいと思います。「糖尿病ケトアシドーシス」は、血糖値を下げる働きをするインスリンが不足し、十分に血糖値が下がらないことで起こります。糖をエネルギー源として利用できないため、体は極度のエネルギー不足になってしまいます。そのため、代わりに全身の脂肪がエネルギー源として一気に分解されて使われてしまう緊急事態です。
血糖値は250mg/dL以上まで上昇することがあり、ひどい場合は意識がなくなる昏睡状態に陥ります。全身の脂肪の分解が急激に促進されることによってケトン体という物質が血液中に大量に増え、血液が酸性に傾き(アシドーシス)、高度の脱水状態になるのです。急に喉が渇き、たくさん水を飲み、尿がたくさん出て、全身がだるくなります。
おなかが痛くなり吐き気を伴うこともあります。このような症状が出た場合には注意が必要です。インスリンの不足が原因なので、元々糖尿病があってインスリン注射をしている人がインスリンを打たなかった場合に起こることがあります。

一方、糖尿病を指摘されていなくても、清涼飲料水をたくさん飲み過ぎてケトアシドーシスになることがあります。甘い飲み物を1日に何リットルも飲むと、一時に大量の糖が体の中へ入ってきてしまい、血糖値を下げる臓器である膵臓は、対応できないことがあります。そうすると、血糖値が急に上昇し、昏睡を起こしてしまいます。このような病態を「ペットボトル症候群」と呼ぶこともあります。
甘いジュースだけでなく、スポーツドリンクなどにも多く糖が含まれていることがありますので、注意が必要です。市販されている清涼飲料水には驚くほどの糖分が含まれているのです。例えば、炭酸飲料(500ml):スティックシュガー約17本分、スポーツ飲料(500ml):同約9本分、100%オレンジジュース・りんごジュース(200ml):同約7本分、缶コーヒー(190ml):同約5本分、微糖缶コーヒー(190ml):同約2本分などです。これらの飲料に含まれる糖分は体内への吸収が非常に早く、血糖値を急上昇させます。これが、ペットボトル症候群を引き起こす原因の一つです。
数年前に私の勤務する病院にこのペットボトル症候群により血糖値が1200mg/dLにもなってしまった人が救急搬送されたことがあります。
「高血糖高浸透圧症候群」は、糖尿病ケトアシドーシスと並んで異常な高血糖を来す急性合併症です。インスリン作用の不足は糖尿病ケトアシドーシスほどひどくはありませんが、血糖値は600mg/dL以上となり、著しい高血糖と極度の脱水がしばしば意識障害を引き起こします。インスリン分泌がある程度保たれているため、糖尿病ケトアシドーシスと比べるとあまり脂肪は分解されず、ケトン体の上昇も軽度であることが多いです。高血糖高浸透圧症候群は、高齢者に多く、肺炎や尿路感染症などの感染症、嘔吐・下痢による脱水、手術などのストレス、脳梗塞や心筋梗塞など、糖尿病以外の病気がきっかけとなり起きることがあります。
糖尿病ケトアシドーシスや高血糖高浸透圧症候群は基本的には急激に糖質を取り過ぎることにより起こる病態です。まだまだ残暑は続いていると思われますが、ジュースの飲み過ぎやアイスの食べ過ぎにはくれぐれもご用心ください。
〈第4土曜日に掲載〉
2025年9月27日号掲載
