100年前に米国のウィリアム・オスラー博士が「人は血管とともに老いる」と述べたように、加齢とともに血管は老化します。現代では生活習慣病の増加によって、血管の老化スピードは速くなり、実年齢より10歳も20歳も高い血管年齢の人が増えています。

血管の働きは血液をスムーズに流し、全身に酸素と栄養を巡らせることです。若い血管はしなやかですが、老化すると弾力を失って硬くなります。すると、血流が悪くなるため、肩凝りや腰痛、冷えなどの不調が現れ、肌や髪のトラブルも起こります。それ以上に怖いのは、動脈硬化が進むことで、心筋梗塞や脳梗塞など、いわゆる「血管病」のリスクが高くなってしまうことです。
血管は、外膜・中膜・内膜の三層で形成されています。外膜は血管を保護し、中膜は血管にかかる圧力を調整する役割があります。内膜は血液に直接触れる部分で、薄い結合組織の層と内皮細胞でできています。内皮細胞は、動脈硬化のもとになる有害物質が血管壁に侵入するのを防ぎ、一酸化窒素(NO)を産生することで、血管壁を広げて血圧を下げる重要な働きをします。
また、内膜に面し、血液が流れている空洞を内腔と呼んでいますが、動脈硬化により内腔が狭くなることで血栓ができやすくなり、血管を詰まらせて心筋梗塞や脳梗塞などの血管の病気を引き起こしてしまうのです。
逆に、血管内に血液がスムーズに流れていると、新陳代謝が促進されて体の健康と若さが維持されます。ところが、不適切な食生活や運動不足、さらにストレス過多な生活を続けると、血管が傷みやすくなり、血液の質も悪化し、健康や若さは損なわれます。血管が年齢とともに衰えるのはある程度仕方ありませんが、「血管年齢=実際の年齢」ではありません。血管を若返らせるカギを握っているのが、先ほど述べた内膜にある内皮細胞です。年齢とともに内皮細胞の働きも低下しますが、近年、食生活をはじめとする生活習慣を改善することで内皮細胞の働きが回復し、血管年齢を下げることが分かってきました。
「血管を若くするための食事の3原則」は、「糖質制限」「塩分制限」「善玉のHDLコレステロールを増やす」の三つです。血液中の糖の値が高い「高血糖」の状態になると、血管が傷み、詰まりやすくなっていきます。また、塩分の取り過ぎは、血圧を上げ、血管を硬くしていきます。さらに、善玉であるHDLコレステロールは、動脈の中で余ったコレステロールを回収して肝臓に運ぶ「回収役」、いわば「ゴミ収集車」のような役割を持っています。HDLコレステロールが十分にあれば、行き場をなくした悪玉のLDLコレステロールが、動脈の壁に入り込んで動脈硬化を起こすのを防ぐことができます。
血糖値を高めないためには、糖質の取り過ぎを避けることが何より大事であり、「糖質制限」は血管の若返りに有効です。また、「糖質制限」は主食の量が減るため、「塩分制限」も行いやすくなります。さらに、善玉のHDLコレステロールを増やすのにも「糖質制限」が有効で、それに加え、豆腐や納豆、おからなどの大豆タンパクや、オリーブ油や青魚から不飽和脂肪酸を積極的に取ることが効果的です。
そのほか、ウオーキングなどのような有酸素運動は血行促進効果があり、血管内皮細胞に適度な刺激を与えるので、血管の若返りが期待できます。また、たばこに含まれるニコチンは、急激な血管収縮によって血圧の上昇をもたらし、動脈硬化が進行してしまうので、たばこを吸っている人は血管のためにも禁煙しましょう。さらに、可能な限りストレスをためないように意識することや、良質な睡眠をとることも血管年齢を若くするのに有用です。
2024年2月24日号掲載
