32 一次予防、二次予防 ~「先手」で対応する重要性

 一般的にイメージされがちな「医療」とは、体の不調や病気の症状を治す「治療医学」のことを指します。一方、病気にならないように取り組むことを「予防医学」といい、人間ドックや健診も予防医学の一種です。つまり、病気になったら治すという「治療医学」に対して、病気にならないように予防するというのが「予防医学」になります。

 そもそも予防とは、前もって悪い事態にならないように防ぐことであり、「予防医学」では、病気を予防するだけでなく、より広い意味で、障害予防、寿命の延長、身体的・精神的健康の増進を目的としています。病気を未然に防ぐだけではなく、病気の進展を遅らせること、再発を防止することも予防であるとされています。それに基づいて、「予防医学」は一次予防、二次予防、三次予防に分類されています。

 一次予防とは、
 ▽生活習慣の改善
 ▽生活環境の改善
 ▽健康教育による健康増進を図ること
 ▽予防接種による疾病の発生予防
 ▽事故防止による障害の発生を予防することなどをいいます。

 二次予防とは、発生した疾病や障害を人間ドックや健診などにより早期に発見し、早期に治療や保健指導などの対策を行い、疾病や障害の重症化を予防することをいいます。

 三次予防とは、治療の過程において保健指導やリハビリテーションによる機能回復を図るなど、社会復帰を支援し、再発を予防することをいいます。

 一次→二次→三次の順に病状が進んだ状態での予防ということになりますので、三次より二次、二次より一次の予防が望ましいと思われます。そして私が今、日常診療で特に力を注いでいるのは、一次予防と二次予防です。

 糖尿病や高血圧、脂質異常症などの生活習慣病は、かなり進行しないと自覚症状がありません。がんも、何年もかかって進行するケースがほとんどです。自覚症状が現れた段階では治療が極めて困難であると言わざるを得ません。これらの病気も早い段階で見つけて治療を始めれば、治癒させることもできます。「後手」にまわらず、「先手」で対応することが、あらゆる病気において重要なのです。

 このようなことから、私は、食生活の改善指導、節酒・禁煙の指導を毎日の診療業務で口を酸っぱくして言っています。いわゆる一次予防ですね。「日本の医師で、この一次予防に介入している先生はどれだけいるのかな?」と時折考えたりします。一次予防は、問診が重要であり、非常に手間暇がかかるので、大半の医師は興味がなく、薬で対応していると思われます。

 また、私は消化器内科医ですので、日々胃カメラ・大腸カメラなどの内視鏡業務を行い、病気の早期発見にも努めています。こちらはいわゆる二次予防ですね。私が医師になって間がない頃は、消化器内科医が早期発見したがんを、消化器外科医が手術で切り取る時代でした。現在では、早期発見したがんを自らが執刀し、内視鏡などで早期治療を行っています。がんの早期発見・早期治療という二次予防の完結ですね。一次予防で病気を予防するのが患者さんにとってベストではありますが、すべての病気が一次予防で片がつくわけではありませんので、二次予防も重要になってきます。

 私は車に例えることが好きで、よく患者さんにこのように話します。「日々の生活習慣の改善(一次予防)が車の日常点検なら、人間ドックや健診(二次予防)は車検のようなものです」と。車の場合、日常点検は重要なことだと思いますが、点検を毎日欠かさずやっているからといって、車検を受けなくても大丈夫ということにはならないですよね? 人間の体もしかりだと思うのです。少しでも健康寿命を延ばしたいと思うなら、日々の生活習慣の改善に加え、人間ドックや健診も真面目に受けるべきだと私は考えます。

2024年10月26日号掲載

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